座りっぱなしが脳を固める?動かないことによる首肩こりリスク
座りっぱなしが脳を固める?動かないことによる首肩こりリスク
こんにちは。リリーフポートの宮本です(鍼灸師・国家資格)。
デスクワークやリモートワークの時間が長くなり、「1日中座りっぱなし」という方が増えています。
「肩が張る」「首が重い」「集中力が続かない」これらの首肩こり症状の背景には、実は“脳と神経の変化”が隠れています。
今回は、動かない生活がどのように脳・神経・前庭系に影響し、慢性的な首肩こりを引き起こすのかを解説します。
動かないことで起こる脳の変化
人間の脳は「動き」を通して最も活性化されます。
歩行、姿勢変化、手の操作など、身体からの入力刺激(固有受容感覚)は、運動野・小脳・体性感覚野を活発に働かせ、神経回路を常にリフレッシュしています。
しかし、長時間座り続けることでこの入力が極端に減少すると、脳は“動かないことを標準状態”として学習してしまいます。
その結果、姿勢を支えるための筋肉の制御が鈍化し、首肩こりを起こしやすい体に変化していきます。
前庭系(バランス感覚)と首肩こりの関係
脳の中には「前庭系」と呼ばれる、身体の平衡感覚をつかさどる重要なシステムがあります。
この前庭系は、耳の奥の内耳にある半規管や耳石器からの情報を脳幹に伝え、姿勢維持・眼球運動・筋緊張の調整を行っています。
しかし、動かない生活が続くと、前庭への刺激が減少し平衡感覚や姿勢反射が鈍くなります。
結果として、脳幹から頸部や肩周囲へ送られる筋緊張信号が乱れ、慢性的な首肩こりを引き起こす要因になります。
特に前庭系と深く関わるのが迷走神経や視床下部などの自律神経中枢です。
前庭の機能低下は自律神経のリズムにも影響し、血流・呼吸・心拍・筋膜の緊張まで変化を及ぼすため、全身的な不調へとつながります。
首肩こりと神経系の悪循環
デスクワーク姿勢では、首が前に突き出し肩甲帯が内側に巻き込みます。
この姿勢を維持することで、頸部の筋肉(僧帽筋・肩甲挙筋・板状筋など)は常に収縮し続け筋膜が硬くなります。
硬くなった筋膜は感覚受容器の働きを鈍らせ、脳に「身体の位置情報」を正確に伝えられなくなります。
その結果、脳は姿勢を誤って認識し、「肩や首に常に力を入れる」防御的なパターンを作り出してしまうのです。
さらに、脳幹では「前庭核」「網様体」「脊髄路核」といった神経核が、筋緊張や自律神経反応をコントロールしています。
座りっぱなしでこれらが過活動に傾くと、交感神経が優位になり、血流が滞り慢性の首肩こりを助長します。
脳疲労と前頭前野の関係
動かないことで起こるもう一つの問題が、脳の「前頭前野」の活動低下です。
前頭前野は思考・判断・感情・注意を司る領域であり、脳への血流不足や酸素低下が続くと感情コントロールが乱れ、集中力やモチベーションも下がります。
この状態が続くと、体の緊張を解くための神経出力が低下し、筋肉が常に“戦闘モード”のまま固まってしまいます。
つまり、「脳疲労」→「交感神経の興奮」→「首肩こり」という流れができてしまうのです。
首肩こりを防ぐためのセルフケア
首肩こりの改善には、「動くこと」と「感覚を取り戻すこと」の両方が重要です。
単なるストレッチではなく、脳と神経を再び活性化するような刺激を意識してみましょう。
- 1時間に一度は立ち上がり、背骨を大きくねじる動きを取り入れる
- 上下・左右への目線運動で前庭系を刺激する(頭を動かさずに目だけ動かす)
- 深呼吸と同時に肩甲骨を寄せる運動を行い、迷走神経を刺激
- 立ち姿勢で軽く片足立ちをして、バランス感覚を再活性化する
- 就寝前はスマホを遠ざけ、静かな環境で呼吸を整える
このような軽い運動や感覚刺激をこまめに行うことで、前庭・筋膜・神経・脳が再び連動し、首肩こりが軽減しやすくなります。
特に「動きを感じる」「重心を意識する」ことが、脳にとって大切なリハビリ刺激になります。
まとめ
「座りっぱなし=動かない生活」は単に筋肉を固めるだけでなく、脳・前庭・神経系の機能までも低下させることがわかっています。
脳の整合性(インテグレーション)が乱れると、身体は無意識のうちに首や肩へ負担を集中させ、慢性的なこりを生み出します。
デスクワークが多い方ほど、1日の中で“動く・感じる・リセットする”時間を意識的に作ることが、健康な神経機能を保つ鍵となります。
リリーフポートでは、神経学・前庭機能・筋膜・脳機能を統合的に評価し、首肩こりを根本から改善へ導く施術を行っています。