頭痛は日本人のおよそ3人に1人が経験しているとされる身近な症状です。医学的には一次性頭痛（脳に明らかな異常がないタイプ）と、二次性頭痛（病気が原因のタイプ）に分かれます。

特に日常的に多いのは一次性頭痛で、緊張型頭痛や片頭痛などが含まれます。生活習慣やストレス、自律神経の働きと深く関係し、私たちのライフスタイルに大きな影響を受けます。

ただし、突然の激しい頭痛や吐き気・視覚障害を伴う場合は、命に関わる二次性頭痛の可能性もあるため早急な受診が必要です。

一次性頭痛は「筋肉の緊張」「血管の拡張」「神経の過敏化」といった要因が複雑に絡み合って起こります。代表的なものには以下があります。

緊張型頭痛は、長時間のデスクワークやストレスで首や肩の筋肉が硬直し、三叉神経脊髄路核を介して痛みが頭全体に広がるタイプです。締め付けられるような痛みが特徴で、夕方に強くなる傾向があります。

片頭痛は、血管の拡張や炎症性物質が三叉神経を刺激して起こります。ズキズキとした拍動性の痛みに加え、光や音に敏感になり、吐き気を伴うこともあります。自律神経の乱れやホルモンバランスも深く関与しています。

群発頭痛は、片側の目の奥に激しい痛みが集中し、涙や鼻水などの自律神経症状を伴う珍しいタイプです。発作は数週間〜数カ月間続くこともあり、視床下部の異常が関わると考えられています。

「目の奥が重い」「焦点が合いにくい」そんな眼精疲労の症状は、実は頭痛とつながっています。 その背景には三叉神経脊髄路核という神経の交差点があり、目と首肩の感覚がここで結びつくため、目の疲れが頭痛として表れるのです。

例えば、近くを見続けて毛様体筋が緊張すると、ズーンとした目の奥の鈍痛が生じます。これが続くと脳は痛みを「頭痛」として認識します。 またブルーライトの刺激は交感神経を優位にし、自律神経のバランスを崩すことで頭痛を悪化させます。ドライアイやコンタクトの不調も同様に三叉神経を刺激し、頭痛の原因になり得ます。

つまり、現代人に増えている頭痛の多くは「眼精疲労を入り口とした神経の過敏化」によって起こっているのです。

自律神経は「交感神経」と「副交感神経」のバランスで私たちの体を調整しています。しかしストレスや不規則な生活でこの切り替えが乱れると、頭痛が起こりやすくなります。

交感神経が過剰に働くと血管が収縮し、筋肉が硬くなるため、緊張型頭痛が悪化します。逆に副交感神経への切り替えが不十分だと、リラックスできず慢性的な頭痛につながります。 また、片頭痛はセロトニンの乱れや血管反応と深い関係があり、自律神経のアンバランスが発作を誘発する大きな要因となります。

生活リズムが乱れることも見逃せません。夜更かしや昼夜逆転は体内時計を狂わせ、自律神経を不安定にし、頭痛を繰り返すリスクを高めます。

日常的にできる工夫で、頭痛や眼精疲労を軽減することは可能です。例えばデスクワークの途中で立ち上がって軽く体を動かすだけでも、血流は改善し痛みが和らぎます。

他にも次のような習慣は効果的です：

• ・画面を目線の高さに調整し、猫背を防ぐ
• ・20分作業したら20秒遠くを見る「20-20-20ルール」を実践する
• ・ブルーライトカット眼鏡や照明調整で目の負担を軽減する
• ・就寝前はスマホを避け、呼吸法やストレッチで副交感神経を優位にする
• ・バランスの良い食事を心がけ、特にマグネシウムやビタミンB群を意識する

こうした工夫は一見小さなことですが、積み重ねることで「頭痛が起こりにくい体」をつくる土台になります。

一方で、セルフケアをしても改善しない頭痛もあります。特に「毎週のように繰り返す」「日常生活に支障が出る」「眼精疲労が取れない」といった場合は、専門的なアプローチが必要です。

専門機関では神経学的な検査や姿勢・骨格の評価を行い、セルフケアでは届かない部分にアプローチできます。 例えば、神経の過敏性を和らげる調整や、血流・循環を改善するケアは、頭痛の根本改善につながります。

セルフケアは大切ですが「限界を超えているサイン」が出たら、無理せず専門家に相談することが早い回復への近道です。

頭痛は眼精疲労・三叉神経・自律神経が複雑に絡み合って起こります。 日常のセルフケアで多くの症状は和らぎますが、慢性化や重症化を防ぐには専門的なケアが欠かせません。

大切なのは「セルフケア＋専門ケア」をバランスよく取り入れることです。そうすることで頭痛の改善だけでなく、再発を防ぎ、日々をより快適に過ごすことができます。